
System iの生みの親
もしAS/400のアーキテクチャをもう一度設計できるとしたらどこを変えたいか、自分自身何度も考えたことがあります。このアーキテクチャが30年以上にわたって使い続けられているのは嬉しい限りです。IBMが初めてこのアーキテクチャを採用したのは、1978年に発表したSystem/38でした。コンピュータ業界は30年前とは様変わりしましたが、このアーキテクチャはいまだに最も近代的なコンピュータ・アーキテクチャとして、どのベンダーからも入手できます。つまり、アーキテクチャを変更する必要はほとんどないと言っていいでしょう。とはいえ、もしもう一度設計できるのであれば、いくつか変えたい部分はあります。
特に手直ししたいのは、ファイル・システムとディスク管理です。アーキテクチャを最初に定義していた当時、コンピュータ業界では、磁気ディスクは近い将来その幕を閉じるだろうと信じられていました。IBMは1956年に磁気ディスク・ドライブを発明し、1970年代中旬にはかなり成熟した技術になっていました。当時のディスク・ドライブは非常に大きくて扱いにくく、磁気ディスクの未来は暗いというのが業界の定説だったのです。
未来の大容量ストレージは、磁気ディスクと比べてはるかに容量の大きな光ディスクだと考えられていました。光ディスクは確かに磁気ディスクより容量こそ大きかったものの、磁気ディスクほど高速ではありませんでした。最も高速なメモリ技術は半導体技術で、半導体メモリの価格は急速に下がっていきました。こうして、1970年代中旬に磁気ディスクを持たない新モデルのコンピュータ・システムが登場したのです。磁気ディスクの代わりに大容量、低コストの半導体メモリを採用し、そのメモリを大容量光ドライブでバックアップするというやり方でした。
IBMを初めとするメーカー各社は、この新モデルのコンピュータに莫大な研究開発費を投じました。大容量、低コストの半導体メモリに使える技術として、半導体バブル・メモリとCCD(電荷結合素子)の2つが有望視されていました。磁気ディスクは、こうした半導体技術に引き継がれていくと見られていたのです。
「シングル・レベル・ストア」というコンセプトは、ストレージ全体を複数のディスクとして捉える考え方であり、今後、回転式磁気ディスクを置き換えていくことでしょう。この技術の価格がさらに下がっていけば、そう遠くない将来、ついに磁気ディスクがその幕を降ろす日が来るかもしれません。